
8/8、大阪市田島南小中一貫校から、たくさんの授業の資料を抱えて別所美佐子先生が糸島まで来て下さい、3時間、熱く語って下さいました。
『生きる』教育では、こども達の様々な困難、心の傷に直結しやすいテーマを授業の舞台にのせ、(その子個人の問題としてではなく)社会問題としてとらえなおします。その視点は、「トラウマインフォームドケア」に基づいていました。こども達のすさまじい暴力や問題行動への対処に追われる負のループから抜け出すために、どうしたらいいかと悩まれていたところ、西澤哲先生に出会い、「トラウマ」や「アタッチメント」を学ばれ、授業をつくっていかれました。暴力は「トラウマ」の再演なので、スイッチが入ると思わず自分がされていた同じようなことを繰り返してしまう、それはトラウマによるスイッチによって引き起こされていて、実は相手に腹が立つ、とかではなかったりする。その再現を止めるために、そうならないよう予防するために、こども達が様々なテーマで丁寧に授業で学んでいく。こども達が必要な知識を得て、友達と真剣に話し合うことで安全な価値観を育み、相互にエンパワメントされ、個のレジリエンスにつながっていく、それが『生きる』教育なのでした。
そこで大事にされた授業が「国語」でした。文章を読みながら、人の気持ちを考えたり、筆者の思いに迫る。そして自分の思いを言葉にできる力をつけ、対話・会話していきます。
又、「人権教育」では、正しく知り、ちがいを認め合い、差別の事実を踏まえ、課題解決の視点を持ち、自分に何ができるかを考える授業に取り組まれています。

田島南小中一貫校には、愛着に課題を持つ児童も多く、さまざまな心の傷を負いながら生活してきたことが想像されます。凄まじい生い立ちのなかで、必死に生き抜いてきた子どもたちの姿をリスペクトすることが大切です。いろんな立ち位置の方から専門的な知識を学び、授業をつくり、「人でできた傷は人で癒される」私たちが「こどもの心に棲める大人になる」(西澤先生語録より)、学校が安全基地となれるよう授業研究を重ねられています。
小1から中3までの9年間の今のプログラムです。
1年生でとりあげられるのが「性虐待防止」。まずこれをやらなあかんという養護教諭の思いがあったそうです。
実は糸島でもこどもの性虐待、それも近親者によるものが少なくないという実情を関係者の方からお聞きしています。でもそれは見えないものになっている。幼少期であればわからないまま、或いは断れないまま、深い傷(トラウマ)を負って一人で抱え続け、生涯苦しむ人たちがいます。小1の時に自分のこころと体は大切なんだということについて学ぶ。これを公開授業にして、お家の方や地域の方、教職員にも「子どもたちに教えています」、って伝えることで、大人への抑止力にもなるということでした。
2年生では、命の誕生~赤ちゃんの時からたくさんの人に抱っこされて人(あなたも)は育ってきているということ、3年生では、こどもの権利条約について学び、守られてない権利があったら助けを求めていいということ(受援力)を学びます。4年生では、ライフストーリーワーク・自分の生い立ちと家族との関係を整理し、記憶の空白を埋めることによって、自分のアイデンティティを確立していきます。これはこどもがつらい体験(記憶の空白)を思い出すことになり(無理にではなく)、しんどい思いもするだろうけれど、真剣に向き合ってくれる人との安心な関係の中でこの空白を受け入れていくことで、自分を取り戻していく大切な心理治療教育となります。

子どもの権利条約の学びで、20条の「子どもは自分の家族と一緒に暮らせなくなった時や離れて暮らした方がよい場合には、かわりの保護者や家庭を用意してもらうなど、国から守ってもらえます」を紹介した時には「私は園には入れられた、と思ってたけど、守られてたんや」とつぶやいた子がいたそうです。児童養護施設はみんなを守ってくれるところなんだと認識されたことはこども達にとっても、園にとっても大切な視点となりました。(その2 へつづく)